みなさんからご要望の多かった「ハイパーブレイナー」の使い方をお読みください。いずれ、「ハイパーブレイナー」もプログラムにする予定ですので、それまでこれで我慢してください。
「人類右脳進化」 第二章より 脳トレ エルピス知力トレーニングトップ
知能を高めるハイパーブレイナー
文章を速く読めるようになった方がいいといっても、なかなかできないことです。ためしに今までの三倍の達さで読んでください。ほとんとの人は三倍の速さで読もうと思っても、三倍の達さにはならないでしようし、三倍の速さになったとしても、意味がつかめないのではないでしょうか。
あるいは、今までの三倍以上の達さで読めるようになったし、充分意味も把握できたという人が、皆さんの中には多いかも知れません。第一章で「ダピデの亀」やイメージ記憶のトレーニングを行ない、右脳が発達したからです。
普通は三倍以上の速さで読めといくらいわれても、できるものではありません。
話を「ナインボックス」を聞発した当時のことに戻します。一九九五年の五月のことでした。私は速読法の本を読んでいたのですが、自分の読書読度を測ってがくせんとしました。分速千字を切っていたのです。
学校を卒業し、社会人になると神経は非常に使いますが、頭を使うことはほとんとありません。少なくとも私が勤めていた会社はそうでした。会社を辞め塾を始めてからも、現在の大学入試程度の易しい問題を教えているだけでは、ます頭を使うことがありません。知らず知らずのうちに脳が退化していたのです。
その後しばらく文章を速く読むようにこころがけると、二週間くらいで以前の速度の半分程度まで回復しました。そうすると、頭がはっきりしていくのがわかりました。脳が錆ひついていたような感じが、それまでは自覚できていなかったのです。
速読の必要性に改めて気付き、塾の生徒達に平均の倍の読度にあたる分速千二百字で読ませようと何回かこころみたのですが、とうしてもできません。同じ文章を何回も読み直しているだけだから、速くなりそうなものですが、せいせい一.五倍程度にしかなりませんでした。
文章を速く読めないのには理由があります。普通の人は文章を読む時に、頭の中で声を出しながら読んでいるのです。頭の中で声を出さないで読めば、一挙に読書速度は数倍に上がります。ところが、いくら頭の中の声を消すようにいっても、これができないのです。
何冊か既存の速読法の本に書かれていることをためしたのですが、全部だめでした。短時間で速読を身につけるのは不可能なのかとあきらめかけていました。
ある日近所の温泉につかっていた時、ふと「ナインボックス」の図が頭に浮かひました。
さっそく生徒達にためしたところ、それまで分速千二百字で読めなかったのに、全員が分速二千四百字で読めるようになったのです。
「ナインポックス」は速読以外にも、勉験前に行なえば勉強したことをよく覚えているという効果もありました。また、手足が動きにくくなった人にも効果がありました。「ナインポックス」を毎日続けると、疲れにくくなり、気分が明るくなるという効果もありました。これは大発見だと思いました。
「ナインポックス」開発後一年近く、さまざまな能力開発法を考案しましたが、その間に開発したものはとれも既存の能力開発法とたいして効果が変わらないもので、本書には紹介していません。そうそう大発見は行なえないようでした。
一九九六年四月、 「ハイパーブレイナー」が完成しました。これはまったく違いました。毎日行なえば、実際に知能が高まるのです。皆さんには信じられないだろうと思います。この文章が私以外の人が書いたものであれば、私もそんなことは信じられません。読者の皆さん、あなた自身でためしてください。毎日三分間トレーニングを行なうだけでいいのです。一週間後、あなたの能カがとれだけ高まっているか、あなた自身でその効果を判断してください。
現在では、速読のために「ナインボックス」ではなく、
「ハイパfブレイナー」を使っています。効果がはるかに大きく、こちらのはうが文章の読解力が高まるからです。それではこれから「ハイパーブレイナー」によるトレーニングを行なっていただきます。
ハイパーブレイナーの準備1
「ハイパーブレイナー」の効果が出るためには、視野が広くなければなりません。ここでいう視野とは比喩的な意味ではなく、目に見える範囲という意味です。ある程度視野の広い人であれば、いきなりハイパーブレイナーを行なっても効果が出るのですが、最初からハイパーブレイナーの効果が出る人は少ないようです。まずハイパーブレイナーの前段階のトレーニングを行います。
124 ページの図2−1を見て下さい。左右の壁に1〜9の数字が書かれています。左右の同じ数字を同時に見ることができるでしょうか。以下のような訓練を一分程度行なって下さい。
1、中央のドアに視点を置き、目を動かさずに、左右の1の数字を同時に見るる。
2、同じように、2,3、4、5,6,7,8,9と左右の同じ数字を同時に見ていく。
3、左右の9を見た後、中央のドアを「トントントン」とノックするイメージを心に抱く。
一分程度1,2,3を繰り返したら、次の「ハイパーブレイナーの準備2に進んで下さい。
ハイパーブレイナーの準備2
本を横にし、126ぺージの図2−2を見て下さい。やはり左右の壁に数字が書かれています。
左右の数学を同時に1〜9まで見た後、ほとんとの人つまり左脳優位の人は右のドアをノックするイメージを持って下さい。(右悩優位の人はその逆の左のドアです。)
これを2分程度行なった後ノックしていたドアを開けるイメージを持って下さい。その後、次の「ハイパーブレイナーの準備3」に進みます。
ハイパーブレイナーの準備3
128ページの図2−3を見て下さい。天井と床の間を上下に往復運動しているポールの絵が左右に描がれています。以下の訓練を行なって下さい。
@左脳優位の人は右のポールを上から下に向かって目で一個ずつ追って下さい。床にきたら逆に下から上に目で追って下さい。右脳優位の人は左のボールです。これを四往復操り返します。
A五回目はポールを上から下に向かって目で追った後、床にきたらそのポールが床にはねかえって外に飛ひ出すイメージを持って下さい。
B最初は目で追うポールが一個でしたが、今度は左右のポールの中間に視点を置き、左右のポールを二個同時に見ながら@Aを行なって下さい。
C外に飛ひだしたポールを追いかけて、自分が走っていき、外に飛ひ出るイメージを持って下さい。
D129ページの図2−4を見て、自分の体が軽く浮き上がり空をゆっくり飛んでいるイメージを思い描いて、そのまま宇宙ステーションに向かっていくイメージを持って下さい。
ハイパーブレイナーの使い方
本書の最初のぺージにハイパーブレイナーがありますので、まずこれを切り取って下さい。
ハイパーブレイナー1とハイパーブレイナー2がありますが、最初はハイパーブレイナー1を用い、慣れてきたらハイパーブレイナー1とハイパーブレイナー2の両方を用いて下さい。
ハイパーブレイナ−1には、右脳用と左脳用があります。普通の人つまり左脳優位の人は右脳用、右脳優位の人は左脳用を使って下さい。
ハイパーブレイナーには裏表があります。数字が書かれている側が表で、いろいろな絵が描かれている側が裏です。
まず、表側を上にして、以下のようにトレーニングを行なって下さい。
@床に書かれた「10」の数字の上に自分が立っているイメージを持って下さい。「10」の上に立っているイメージを持ちながら、左右の1〜9の同じ数字を同時に見るのですが、1〜3、4〜6、7〜9のそれぞれの列の数を、さっと流して見て下さい。1〜9を見るのにかかる時間が二秒以内になる速さで左右の数字を見て下さい。
A「10」の数字が書かれている所から、「20」の数字が書かれている所に、軽く跳ひ移るイメージを描いて下さい。@と同様に、
「20」の上に立っているイメージを持ちながら、左右の三列の数字を見た後、
「30」に飛ひ移るイメージを持つ。以下同様に、床に書かれた数字の上に立っているイメ「ジを持ちながら、左右の数字を見た後、次の床の数字に飛ひ移るイメージを持って「40」,
「50」‥「100」と進めて下さい。
B100の場所に立っているイメージを持ちながら、左右の数字を見た後は、そこから外の宇宙空間に飛ひ出すイメージを持って、ハイパーブレイナーを裏返して下さい。宇宙遊泳をしているイメージを持ちながら、裏の絵を五秒程度眺めて下さい。
後はの@〜Bを繰り返して下さい。最初だけ、五分程行なって下さい。一度ハイパーブレイナーの効果が出た場合は二分程で結構です。
使い方がわかったら、ハイパーブレイナーのトレーニングを実際に行なって下さい。
ハイパーブレイナーを行なった後、本書でも他の本や新聞でもいいですから、しばらく読んでください。あなたは次のとれにあてはまるでしようか。
ー、文章を読むのが速くなり,しかも理解力が高まった。
二、文章を読む速さに変わりがないが、理解力が高まった。
三、特に変化がない。
三の変化のなかった方はもう一度「ハイパーブレイナーの準備1」からやりなおして、一か二の効果が出るまで続けてください。二十分以上かかっても効果が現われないような場合は、これから行なう速読訓読でハイパーブレイナーをナインポックスかダビデの亀に置き換えて行い、速読訓読を行なった後もう一度ハイパーブレイナーを行なって下さい。ハイパーブレイナーの効果がなかった場合でも、毎日続けると必ず効果が出てきます。あきらめないで下さい。
さて、これから速読訓練に移ります。前にお話ししましたように、文章を読むときに頭の中で声を出さないで読むと、読書速度が数倍になります。目標は頭の中で声を出さないで文章を読めるようになることです。
これからは、文章を読むとき「頭の中で声を出さない」,、目をなめらかに動かす」ことをこころがけて下さい。
ストップウオッチがあればいいのですが、なければ秒まで計れる時計を用意して下さい。速読用の練習文が1〜6まであります。練習文1〜5はそれぞれはぼ千字の文章です。二十五秒で読めれば分速二千四百字、十五秒で読めれば分速四千字です。練習文6は二千字の文章です。それぞれを何秒で読めるか計って下さい。
速読訓練1
次の練習文1と練習文2に出来るだけ速く目を通して下さい。「頭の申で声を出さない」、「目を素早くなめらかに動かす」ための訓練ですので、練習文1と練習文2は読まないで下さい。すべての文字を瞬間的に見るだけでいいのです。それぞれに目を通すのにかかった時間を測って下さい。目標時間はそれぞれ十五秒です。
練習文1(千字)
あああああああああああああああああああああああ、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、ううううううううううううううううううううう。ええええええええええええええええええええええええ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。かかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかか。 ききききききききききききききききききききききき、くくくくくくくくくくくくくくくくくくく。けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ、ここここここここここここここここここ、きささささささささささささささささささ、しししししししししししししししし、すすすすすすすすすすすすすすすすすすすすす。せせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせ、そそそそそそそそそそそそそそそそそそ。 たたたたたたたたたたたたたたたたたたたた、ちちちちちちちちちちちちちちちちちちちち、つつつつつつつつつっつつつつつつつつつつつつ。 ててててててててててててててててててててて、とととととととととととととととととと、なななななななななななななななななななかな。ににににににににににににににににににににににに、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、ねねねねねねねねねねねねね、のののののののののののののののののののののののののの。 ははははははははははははははははは、ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ははははほはははほほほはははほほほははははは、ままままままままままままままままままままままま、みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみ、むむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむむ。めめめめめめめめめめめめめめめめめめ、もももももももももももももももももももも、やややややややややややややややややややや、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ。 よよよよよよよよよよよよよ、ららららららららららららららもらららもらら、りりりりりりりりりりりりりりりつりりり、るるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。れれれれれれれれれれれれれれれれれれ、ろろろろろろろろろろろろろろろろろろ、わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ、んんんんんんんふんんんんんんんんんんんん。 |
練習文2(千字)
論理とは思考の一般的法則であり、思考とは事物を認識せんが為の判断、推理を意味する。 しかるに、今日的状況における感覚の源泉たる認識の対象は不断の変化を伴うがゆえに、眼前の対象に対し、感覚表象をかくたる基準を満足たらしめるに充分な哲学的一般性を欠き、そのことがより一般牲を持った世界観を創出する価値判断をなお一層困難たらしめている。 万物創生における形而上学的蓋然性にかんがみ、人類を媒介とする法則性に寄与すべき特殊的自己崩壊の散発的な兆候はこれを認めうるに足らず、均質的な社会における状況把握が困難とはいえ、なお前衛約可遡牲を失ってはいない。 文明社会における主たる経営主体を無対象的に粉飾している一般的原理もこのカテゴリーに属するゆえに、その限界代替性は明白ではなく、それゆえ後者の精神的価値は構造化されていない。あるいは前者の啓示により論証されうるべき関係が暴露された可能性を否定できない。なぜならば一般に文明を文明たらしめているのはまさにその論理であるからである。 逆にいえば我々がその存在を認知しえない対象にさえ、この一般的原理は該当し、種々の矛盾を生じさせていることになる。すなわち、ある種の後進性を持った主体はその真理の試行に際し厳然たる選択権を行使するのである。それゆえ、その種の存亡はただ一点、いかにしてその獲得した生物学的権利を保持するかにかかっている。 されほどて。その論理は必然的に永続牲を備えているとは限らない。ある種の人間、たとえば自らの存在を容認しえない哲学者などは、このような場合嫌悪感を抱くであろう。自らの置かれた環境を絶えず監視しその方法がいかに古典的であるかを吹聴し、それが使命であるかのような錯覚を抱きつつも、その存在意義は希薄である。 意識的にせよ、無意識的にせよその犯罪的意図は明白である。精神的葛藤があるにせよ、その方法論を論じた場合やはり非難されるべきであろう。けだし人間を人間として認識せしめているものは包括的目的性である。さらにいえば、経済的影響のもとに最低限の生活を余儀なくされつつも人格的欠陥をあえて否定しうるに足る危機的状況を無視できないとの認識に立ってこれを再考する必要があろう。現代社会におけるこのような認識論に立脚し、なおかつ冷静な判断を失わずにこれに対して論駁するには合理性が必要となる。我々はこのような無価値論的日和見行動は厳に慎しまねばならない。 |
いかがでしたか、それぞれ何秒かかったでしょうか。ところで練習文2は練習文1よりも時間がかかったのではないでしょうか。実は練習文2は一見文章のように見えますが、意味を持たない単語の羅列にしかすぎないのです。今までの習慣でつい頭の中で声を出して読んでいたのではないでしょうか。
練習文2の方が時間がかかった場合は練習文1にかかった時間と同じか、それ以下の時間で練習文2に目が通るまで繰り返して下さい。
文のイメージ化
たとえば「ゴンタは、小百合を愛している少年を殴った。」という文を考えてみます。本書の読者ならばこの文の意味をはほ瞬間的に理解できると思います。ところが現在の高校生の中にはこの文の意味をまったく理解できない者が数人に一人の割でいるのです。
私はそんな生徒に三十分程かけて誰が誰をどうしたかという関係を理解させます。やっとこの文の意味が理解できたら、今度は「小百合が愛している少年をゴンタが殴った。」という文を示します。そうすると二十分程度の時間でこの文の意味が理解できるようになります。
このようにしてだんだんと文の意味を理解できるまでにがかる時間が短くなっていき。最後には、十秒はどで「小百合を愛している少年は、ゴンタを蹴った。」という文の意味が理解できるようになります。この場合、読書速度が百倍に上がったということになりそうです。
「ゴンタは、小百合を愛している少年を殴った。」という文は「ゴンタ」、
「は」、 「小百合」、 「を」、 「愛し」、
「て」、 「いる」、 「少年」、 「を」、 「殴っ」、
「た」という単語=記号を日本語の文法に従って並べたものです。
たとえば「少年」という単語について考えてみます。
「少年」とは何かの定義、あるいは、「少年」とはどのような集合を指すのかは、各人が生まれ育った環境やそれまでの経験によって、人により異なります。しかし社会通念上一定の枠内に納まり、自動車を「少年」と呼ぶ人はいません。
「少年」という単語はたった二字の記号にしかすぎません。しかしこの二字の記号には大量の情報が潜んでいます。「少年」とは何かを、仮に一万字の文章にしたとしましょう。しかし一万字の文章よりも、人が「少年」という単語を目にした一瞬の方がはるかに多くの情報が脳内で処理されています。
「ゴンタは、小百合を愛している少年を殴った。」という意味が理解出来ない高校生でも、「少年」が理解できないのではなく、
「は」、 「を」、 「て」、 「いる」、 「を」という単語と単語を結ぶ語や、単語の並び方による関係がつかめないだけです。脳内で処理されている情報量は普通の人とあまり変わらないのです。
「ゴンタは、小百合を愛している少年を殴った。」という文の意味を理解できる人は、いちいち「少年とは何か」を意識しません。そんなことを考えていたら、この文を読むのに数時間かかってしまうでしょう。「ゴンタは、小百合を愛している少年を殴った。」これを読むとき頭の中に「ゴンタという男と、小百合という少女と、ある少年の三人がいる。少年は小百合を愛している。ゴンタは少年を殴った。多分ゴンタも小百合を愛していて、やきもちをやいたのだろう。」というイメージが浮かぶはずです。
文章を読み理解することは、単語=記号間の結び付きが持つ情報を頭の中でイメージに変換する作業です。第一章でイメージ記憶の訓練をしていただきましたが、これは記憶力の訓練だけでなく、文章からイメージへの変換の訓練でもあったのです。ある程度の学力があって、他の教科に比べ国語が苦手な生徒の場合、イメージ記憶の訓練を数分行なっただけで、急に文章が理解できるようになります。文章を読んでも内容がつかめない場合は文章からイメージへの変換がうまく行なわれていないということです。
「ゴンタは小百合を愛している少年を殴った。」が理解できない高校生は、マンガやテレビのように直接視覚にうったえる情報しかイメージできません。彼が文章を読んだとき、どんな感覚になるかを経験するため、練習文2を普段本を読む速さで読んでみて下さい。まったくなんのイメージも浮かばないはずです。それは当然でまったくでたらめな文だがらです。「ゴンタは小百合を愛している少年を殴った。」が理解できない高校生に、大学入試に出題された文と練習文2
を読ませて、どちらがでたらめな文かを尋ねても、答えることができません。彼にとってはどんな文章も意味を持たないもので、イメージを描くことができないのです。
文章を読むときは、心にイメージを描かねばなりません。頭の中で声を出さず、文章からイメージへの変換を直接行なうように意識して下さい。最初は読んだような気がしないかもしれませんが、慣れるとこの読み方のほうが理解力が深まってきます。
速読調練2
次に練習文3〜練習文6を読んでいただきます。まず目標を設定して下さい。読書訓練1で千字に目を通すのにかかった時間を目標にするといいでしょう。
それぞれ千字の文章ですので、十五秒なら分速四千字、二十秒で分速三千字、二十五秒なら分速二千四百字です。ただし、練習文6は二千字あるので倍かかります。
「ゴンタと小百合の物語」という話を速読練習用に作った文章ですが、荒唐無稽な内容になっていうのは私が右脳人間であるということでお許し下さい。
以下の方法で訓練して下さい。
一、練習文を読む前にハイパーブレイナーを三回行なう。
二、頭の中で声を出さないことと、目をなめらかに動かすことに注意しながら練習文を読む。練習文を読むときは、出来るだけ速く文字を目で追い、頭の中、特に頭の後のほうで情景を思い浮かべ映画を見ているような感じを持つ。
三、それぞれの練習文で目標時間に違するまで、一、
二を繰り返す。
練習文3(千字)
ゴンタが初めて小百合に会ったのは、二月の雪の降る日の京都だった。雪景色の京都はゴンタの疲れた心を、透明な優しさで包んでくれていた。だれかの気配にふと後を振り向くと、五メートルほど後を和服姿の小百合が歩いていた。小百合は、ゴンタの目を見つめ、突然いった。 「あのう。あなた、ゴンタさんでしたね。」 「はっ?」 「いいえ。」 そのまま小百合はゴンタの前を通りすぎていった。ゴンタには心あたりがまったくなかった。きつねにつままれたようで、ゴンタは小百合の後を追うこともなく立ち止まっていると、小百合は路地に消えていった。 次に、ゴンタが小百合に会ったのは、その年の桜が満開の頃だった。ゴンタは会社の同僚数人とともに花見酒としゃれていた。酔いがまわり、公園の桜の下で大声で「エイトマン」の主題歌を歌っていると、隣の家族づれがしかめっつらでこちらをにらんでいた。ゴンタは、「ゲッタラポンポンへポチャッタ」とわけのわからないことを叫びながら服を脱ぎだし、すっぱだかになって桜の木に登った。木の上で「大日本帝国万歳!」と叫んでいるとすぐに警官が二人やってきて引きずり降ろされた。パトカーに連れていかれる途中、小百合が着物を着て立っているのにすれ違った。その時小百合がぼそっといった。 「ゴンタさん、あなた大物ですね。」 小百合の方をふりかえりながら連行されていくゴンタの目に、小百合がふかぶかと御辞儀をしているのが映った。 六月、梅雨の日の午後。美術館の絵の中に小百合はいた。ある新進画家の入選作のモヂルが彼女だった。絵に描かれた着物姿の小百合の目はゴンタの目を見つめ、なにかを語りかけているようだった。 八月、ゴンタはインドに旅をした。列車の中で知りあった人がゴンタを気に入り、自分の家に泊めてくれた。その人の家族全員といっしょにテレビを見ていると、小百合の着物姿がほんの一瞬映った。インドの独立記念式典ということで、彼女が何者かはわからなかった。 十月、ゴンタは人のいない日本海の浜辺でひとりウィスキーのポケット瓶を飲んでいた。小型のヘリコプターがさっきから頭上を飛んでいた。ヘリコプターに向かって「やかましい」と怒鳴ると、小百合がヘリコプターから身をのり出し「ゴンタさあん」と叫んで振袖の手を振った。ヘリコプターはそのまま飛び去った。 雪の降るクリスマスイブの夜。ゴンタと小百合は小さな教会で結婚式をあげた。 |
練習文4(千字)
ゴンタと小百合が結婚して初めての正月、二人は山陰の、とあるひなびた温泉に旅行した。 ゴンタが露天風呂につかっていると、隣の女湯のほうから「ゴン、ゴン、タンクにゴン」という小百合の歌声が聞こえてきた。男場にも女湯にも他の客はいなかったので、ゴンタは男湯と女湯の境界の岩ごしに小百合に話しかけた。 「サユリっちゃん、遊びましょ。」 「避ぽ、避ぽ、何して避ぽ。」 「宇宙人ごっこして遊ぽうか。」 「それ、いいね。あたしガンダラ人になるから、あなたベラメッチャ人になって。」 「いいよ。ほれ、パッパラパーのベラメッチャ、ポンタミンのビビンガピン。」 ゴンタはその言業をなにげなく口からでまかせに言ったにすぎなかった。しかしそれは銀河系同盟の最高機密であった。銀河系のすべての惑星に設置されているセンサーの一つが偶然その温泉の地下二千メートルにあったのだ。その後二年間のベラメッチャ人による地球占領はこのようにして始まった。 べラメッチャ人による地球占領は暴力的なものではなく、逆に飢えや病気、貧困などの地球上のさまざまな問題を解決してくれた。占領軍の指導のもとに誕生した地球連邦政府の決定は占領軍のチェックをうけるので一部の者は不満を持ったが、大多数の人類にとってはべラメッチャ人の登場は歓迎すべきものであった。 奇妙なことに、銀河系同盟の最高機密を口にしたのがだれであるか、ベラメッチャ人の必死の調査にもかかわらず、ゴンタが関係しているらしいとわかるのに二年間かかった。占領軍総指令部に連行されたゴンタはさまざまな装置を使って調べられた。不思議なことにどの検査でも、ゴンタは有罪とも無罪とも判定できないのであった。 小百合は占領軍総指令部に抗議に行き、ゴンタの釈放を強く求めた。小百合の姿を見たべラメッチャ人はなぜか皆恐怖に青ざめた。ゴンタは丁重に扱われ釈放された。べラメッチャ人による地球占領はこうして突然終わったのである。ベラメッチャ人は一人残らず地球を去り、地球と銀河系同盟の聞には一切の通信手段さえ残されなかった。 「よかったねゴンちゃん。」 「うん。でもどうしてこうなったの?」 「あなったって、本当に大物ね。」 「えっ?」 「ううん、いいの。」 こうして二人はまた楽しい生活を送ったのであるが、マスコミの取材がやかましく、二人はアマゾンの奥地にひっそりと隠れて暮らすことになったのである。 |
練習文5
ゴンタと小百合がアマゾンの奥地での生活に慣れてきたころ、ゴンタは川で魚を釣っているときに半魚人に出会った。ゴンタは量初少し驚いたが、この半魚人が食べられるかどうか考えていた。 半魚人のはうはゴンタを見て経験したことのない恐柿にかられた。今迄は人間を見ると捕まえて食べていたのだが、今回はただの人間ではなく、なにかとてつもない化物を見たように感じた。ギョエーッと叫び声をあげて、急いで川の中に潜っていった。 密林の中にある小屋に戻ったゴンタは、小百合に半魚人と出会ったことを話したが、小百合は「あらそう。」というだけで関心を示さなかった。 それから数週間がたち、二人とも半魚人のことは忘れていた。ある朝、目が覚めると小屋の前にかごに入った魚が置いてあった。 次の日の朝、ゴンタが用をたしに小屋を出ると、数人の半魚人達と出会った。半魚人達はゴンタの姿を見ると地に平伏して、半魚人語でなにかをいったが、ゴンタにはその言葉がわからなかった。ゴンタは半魚人を食べるという気がなくなっていたので、彼らがゴンタのほうを振り返りながら立ち去るのを黙って見ていた。 このようなことが数ヶ月続いて、ゴンタは次第に半魚人の言業を覚えるようになった。半魚人達はゴンタのことを半魚人語で「偉大なる魚」と呼び、小百合のことを「偉大なる人間」と呼んだ。小百合は彼らに掃除や洗濯を手伝ってもらい、家事が楽になったと喜んだ。 ゴンタの小屋によくやって来る半魚人の中に、ギョッパという若者がいた。ギョッパが最近元気がないので、小百合が声をかけたところ、ギョッパは自分の悩みを打ち明けた。ギョッパが海水浴に行ったとき、人魚のマリンと出会い、二人はたちまち熱い恋に落ちたのだった。だが、上半身が魚で下半身が人間の半魚人と、上半身が人間で下半身が魚の人魚とはなさぬ仲であった。両者とも昔から、相手を自分たちが軽蔑する人間以下の存在だと思っていた。両方の親は二人の結婚に猛反対で、ゴンタと小百合が二人の親に結婚を認めるように説得することにした。 ゴンタがギョッパの両親を訪ねると、しぶしぶ二人の結婚を承諾した。小百合はマリンの親を説得に行った。 「あなたたち、古い考えは捨てなさい。今は、ゴンタと私でさえ結婚する時代よ。半魚人と人魚ならちょうどいいじゃない。」 小百合の説得も成功し、ギョッパとマリンは結婚した。 ギョッパとマリンの間には、人間の子供が生まれた。 |
練習文6(二千字)
小百合はアマゾンの奥地に移り住んでからも、ずっと和服を着ていた。ゴンタがいくら動きやすいものを着るようにいっても、頑として聞き入れなかった。 小百合は小屋に着付教室の看板を出していた。半径五十キロの範囲には二人以外の人間が住んでいないので、だれも着付を習いにこないだろうことは。ゴンタでもわかった。 ある日、小百合がジャングルを歩いているときに、着物の袖を木にひっかけてしまい、一番お気に入りの着物をだめにしてしまった。 「ねえあなた、一つお願いがあるの。この前、着物がだめになったでしょ。あたし、あれ気に入ってたの。あれと同じ着物買って。」 「着物を買うといったって、ここから日本は遠いし。第一、お金がまったくない。だめ。」 「あなたは、前はあんな大物だったのに、いつからそんなけちになったの。ふんだ。それじゃ、自分で稼ぐわ。パートに行くわ。」 次の日から小百合は午前九時から、牛後五時までどこかに行って姿を見せなくなった。どこに行っていたか尋ねても、「教えてあげない。べーだ。」としかいわなかった。 数週聞が過ぎ、小百合もやっと機嫌がなおってこういった。 「実は、あたしスーパーにパートに行ってたの。」 「スーパーっていっても、ここからだいぶ遠いだろ。それに、君はポルトガル話が話せないし。」 「プラジルじやなくて、日本のスーパー。」 「それじゃ、なおさら遠い。」 「実は、あたし結婚するとき、実家からUFO持ってきてて、それに乗って日本のスーパーまで通っていたの。」 「あれっ、君って宇宙人だったの。そういや、おれ、君の実家に行ったこともないし,君の両親に会ったこともなかったっけ。」 「そうね、明日わたしの実家に二人で行きましょうか。ちょっと遠いけど。ここからだと、千光年ぐらいかな。」 小百合のUFOで実家のガンダラ星に行くと、小百合の父スッタラカと母ボンコレラが待ち構えていた。 「やあ、ようこそゴンタ君。」 「はじめまして。ゴンタです。」ピョコン。 「まあ、堅苦しいあいさつはおいといて。酒でも歌もう。」 スッタラカはゴンタにしきりにパンカラ酒をすすめ、自分も上機嫌で飲みだした。 「最近、仕事の方はどうがね。」 「まあ、仕事といっても、川で釣をするくらいで、気楽にやっています。」 「そうか、そうか、それは良かった。まあ、もう一杯。」 スッタラカは飲めば飲むほど上機嫌となり、酔いのため妻のボンコレラの前だということも忘れて、浮気相手の女のことまでしゃべり始めた。 「まあっ。あなたったら。浮気していたんですか。」 ゴンタも酔いつぶれていて、その後のことは覚えていない。気がついたら、アマゾンの小屋で寝ていた。小百合が達れ帰っていたのだ。 「しかし、君のお父さんは酒が強いなあ。」ゴンタにはそれだけが強く印象に残っていた。 「ねえ、あなた。どうして私が宇宙人だとわかった時、驚かなかったの?」 「ぼくは、別に人種差別主義者じやない。」 「そういう意味じやなくて。普通、地球人って宇宙人を見ると驚くでしょ。」 「ぼくは別に驚かない。 」 「あなたは持別よ。うちのお父さんが、あなたのことをとても気に入ってね。あなたが酔いつぶれて寝た後、あなたが大物だと感心してたわ。あなたをお父さんの後継者にしたいっていってたわ。」 「お父さんは何をしている人?」 「銀河系同盟の議長をしているの。銀河系で一番偉い人よ。」 「おれはそんな仕事したくないなあ。今の生活に充分満足している。」 「まあそういわずに。来週もう一度実家に遊びに来るようにいってたわ。行ってくれるでしょ。」 次の週二人がガンダラ星に行くと、星をあげての歓迎となった。スッタタラカ以下銀河同盟の幹部が全員ゴンタに土下座していた。 「ゴンタさま、知らぬこととはいいながら、先日は大変ご無礼のほどお許し下さいませ。これ小百合、頭が高い。このお方をどなたと心得る。へポチャッタカンカンでいらっしやるぞ。おまえもこちらにきて土下座しろ。」 「あらそう。ゴンちゃんはへポチャッタカンカンだったんだ。」 「もう、この子は。昔からずれてたからなあ。とほほ。」 「いいでしょ。今まではただの地球人だと思っていても、私の大切なゴンちやんだったし、へポチャッタカンカンだとしても私の大切なゴンちゃんに変わりはないんだから。」 「小百合、身分が違う、身分が。お前のような者が、ゴンタさまの奥方になるわけにはいかない。身を引け。」 ゴンタには小百合とスッタラカのやりとりの意味がまったくわからず、口をあんぐりと開けて二人を見ているだけだった。小百合は突然ゴンタの腕をつかみUFOに速れ帰り、そのまま地球に帰ってきた。 「ねえ、いったいどうなってるの?」 「いいの。あなたはなんにも気にしなくても。ねえ、ゴンちゃん。」 「ん?」 |
クイズ: 練習文6には一箇所間違いがありまず。それはなんでしょう。 |
答え:小百合は午前9時から午後5時まで日本のスーパーにパートに出ていたが、ブラジルと日本には時差があり、その時間はスーパーが閉まっている。